■教科別得点の平均点及び総得点の平均点(全日制課程)
年度 | 国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 総得点 |
---|---|---|---|---|---|---|
令和6年度 | 31.5 | 23.9 | 23.8 | 27.0 | 25.4 | 131.5 |
令和5年度 | 30.9 | 31.8 | 26.9 | 26.0 | 28.2 | 143.8 |
令和4年度 | 31.8 | 24.7 | 26.7 | 28.2 | 25.8 | 137.1 |
令和3年度 | 29.0 | 35.3 | 24.4 | 27.0 | 28.7 | 144.4 |
令和2年度 | 27.7 | 28.5 | 25.7 | 27.0 | 28.4 | 137.3 |
平成31年度 | 26.9 | 30.1 | 27.3 | 31.3 | 24.6 | 140.3 |
平成30年度 | 29.9 | 30.4 | 24.6 | 28.6 | 27.7 | 141.2 |
平成29年度 | 28.3 | 27.6 | 27.4 | 31.4 | 29.1 | 143.8 |
平成28年度 | 27.9 | 27.4 | 25.2 | 30.6 | 30.3 | 141.3 |
平成27年度 | 29.6 | 33.4 | 26.4 | 27.2 | 28.9 | 145.5 |
平成26年度 | 25.6 | 24.9 | 28.5 | 26.7 | 30.7 | 136.3 |
平成25年度 | 23.5 | 27.1 | 27.5 | 25.2 | 27.1 | 130.5 |
平成24年度 | 25.3 | 30.0 | 22.8 | 29.2 | 26.6 | 133.9 |
平成23年度 | 24.9 | 29.1 | 23.2 | 29.1 | 26.8 | 133.1 |
平成22年度 | 29.1 | 30.2 | 26.5 | 25.4 | 22.2 | 133.3 |
平成21年度 | 25.2 | 24.9 | 29.5 | 23.2 | 23.7 | 126.6 |
平成20年度 | 25.2 | 27.8 | 21.2 | 25.5 | 31.1 | 130.7 |
平成19年度 | 29.8 | 29.2 | 21.0 | 28.7 | 26.0 | 134.7 |
平成18年度 | 30.6 | 24.7 | 17.6 | 25.7 | 28.3 | 127.0 |
令和6年3月実施の鳥取県立高校入試 学力検査の平均点が発表されました。詳細PDFファイルはこちら
総得点平均点 131.5(250点満点)と過去10年で最も低い平均点となりました。以下に各教科の出題傾向と難易度を分析していきます。
大問は、問題一〈小問集合〉・問題二〈文学的文章〉・問題三〈関連資料付きの説明的文章〉・問題四〈古文〉・問題五〈資料を基にした表現と作文問題〉の4題構成となり、大問構成が昨年までの5題から4題に変化しました。
平均点は前年の30.9点から0.6点アップの31.5点でした。鳥取県公立高校入試の国語については読む分量が1万字越えと、全都道府県の中でも読む量の非常に多い問題となります。その中でも前年度に比べて平均点がアップしているのは、基本的な読解力が備わっている生徒が多い証左だと思われます。
問題一の小問集合では、漢字の読み書きや筆順、四字熟語、文法と漢文といった言語知識に関する問題など幅広い分野から出題されています。中でも「もっぱら」の漢字の書きを問う問題[問一(3)正答率34.7%]が正答率の低い結果となりました。漢字問題は毎年出題されます。部首とつくりに注意しながら、漢字を一つでも多く習得するようにしましょう。
問題二の文学的文章は、あさのあつこによる小説『ハリネズミは月を見上げる』からの出題となりました。場面や状況の理解は概ねできていましたが、登場人物の心情を説明する記述問題の正答率は低いものとなりました。[問三正答率28.7%・部分点率52.0% 問六正答率25.3%・部分点率41.3%]ただ、部分点を取った撮った生徒数を加味すると、過半数の生徒は取れいていた問題となります。記述問題が不得意な生徒は、まず問われていることを明らかにしましょう(「なぜ」なのか、「どういうこと」か)。そのうえで、解答の根拠となる箇所を本文中から探す訓練をしてください。
問題三では、関連資料付きの説明的文章で、宇野仙による『SDGsは地理で学べ』からの出題となりました。本文に関連資料を追加した出題形式は、大学入試共通テストにも共通します。高校入試から大学入試を意識した問題を出題しようという、問題作成者の意図がうかがえます。文章と関連資料などの情報と情報との関係について理解を求める問題について正答率が低く、課題が残ります[問五正答率28.0%・部分点率0.7%]。また、最後の記述問題「筆者が思い描く日本における『コンパクト・シティ』とはどのような都市ですか」の問題も非常に正答率が低く、本文中から答えの根拠を探し出すことに苦労した生徒が多かったことがうかがえます[問六正答率1.3%・部分点率46.7%]。最近の鳥取県公立高校入試国語記述の問題では、3点配点の問題が出題されており、本門も配点3点の問題です。記述のポイントは必ず本文中に複数存在しているので、じっくりとポイントを見つけるようにしましょう。また、この問題のように筆者の主張を問う問題では、筆者主張は本文最後に書かれることが多いことも頭に入れておきましょう。
問題四の古文は、標準的な内容の問題で、正答率もおおむね5割を超えていました。
最後の問題五は前半で国語表現について、後半で作文についての問題でした。後半の作文については、満点で6点の配点と、5教科の中で最も高い配点となります。条件が細かく設定されていますので、10分程度の時間が必要となります。時間配分に気を付けて、必ず作文問題には取り組むようにしましょう。
大問構成は、去年と同じく5題の構成で、
設問数39問となり前年度より4問増えました。
全県平均点は去年の26.9点から3点ダウンの23.9点と、やや低くなりました。
過去5年間で最も低い値です。
問題の傾向としては、前年に引き続き日常生活における題材について数理的に考察し、処理する力をみる問題が出題されました。
また、批判的な視点や複数の可能性を検討する考えを必要性とする問題が見られたのも特徴的です。
例えば問題2の表や箱ひげ図、ヒストグラムから直接的な情報・傾向を読み取る問題では、一見正しく見える誤った選択肢があり、完答率27.3%と、誤答が多くみられました。
問題5の立体図形の問題でも、ひものかけ方を複数想定し、その中から適切なものを検証する必要がありました。
この方法は正しいのか、他のパターンはないかなど、疑いの目を持つことを常の練習から心がけましょう。
問題3は速さと連立方程式の問題でした。
立式の問題が3問ありましたが、1問目の正答率が去年の54.2%から20.0%と大きく下がりました。今年の入試では立式の問題が全5問ありました。問題1の問4の不等式の立式は正答率が60%を越えていましたが、その他4つの方程式の立式はいずれも正答率が20%以下でした。この正答率の違いは問題の構造にあると思われます。
正答率の低かった4つの方程式はいずれも式の一部分がすでに示されていました。つまり、自由な立式が出来ないため、「分」を「時間」に直すなど示された数の単位に合わせて式を整理する必要があり、それに対応できなかった解答が多くなったと考えられます。また、そもそも示された数が何を表すかを読み取れていなかった受験者も多かったのではないでしょうか。
普段の勉強時にも解説をただ写すのではなく、示された式の一部一部がどんな値を示しているのかを考えながら答え直しをしていく必要があります。
鳥取東高・西高を狙う受験生であれば基礎の計算力を間違いないものとするのはもちろんですが、記述問題・作図問題の対策をしっかり行いましょう。
今年は特に、記述問題における方程式の立式の力が得点を左右したのではないかと思います。「解説とは違った方法だけど解ければいい」で終わらせず、「自分はこうやって解いたけれど解説の式はどうやって作るんだろう?」と自分を伸ばすような練習を積み重ねていってください。
大問構成は、例年通り、問題1〈地理的分野〉・問題2〈歴史的分野〉・問題3〈公民的分野〉の3題構成で、昨年より4問減り38問でした。
一昨年が40問・昨年が42問なので、ここ3年の中で問題数は一番少なくなっています。
これまでと同様に、社会的事象についての基礎的な知識や概念を問う問題、基礎的な知識を活用して様々な地図やグラフ・資料を読み取り記述させる問題が出題されています。
問題1の地理分野では、寒い地域の建物の工夫について、高床になっている理由を「建物から出る熱」により永久凍土が溶かされることを記述する問題の正答率18%、「雨庭」に着目して「防災」という視点から、マンホールから水が飛び出す仕組みを踏まえて知識を活用する総合的な問題の正答率13,3%と難問でした。
地域的特色を理解するだけでなく、様々な資料を活用し地理的事象を様々な視点から考察し表現する力を身に付けることが重要となりました。
問題2の歴史分野では、古代から近世、近世から現代までの問題がまんべんなく出題されています。各時代の基礎的な知識を問う問題の正答率は高いものとなりました。
また、歴史事象の並び替えについても、選択肢に含まれている情報の整理できていたため、例年よりも正答率は高かったです。
一方、江戸時代の海上交通・男子普通選挙の有権者資格を問われる問題では、語句の認識はできているが内容の把握ができておらず、同じような語句と内容が混在したため正答率20%前後と低いものとなりました。
また、太平洋戦争前の日本国内の様子を問う問題の正答率8%と極めて低いものとなりました。
各時代の背景や出来事を正確にとらえ、各制度・法律がどのような役割を果たし施行されるのかについて学習していくことが重要です。
問題3の公民分野では、効率・公正やグローバル化・鳥取県人権尊重の社会づくり条例についての問題の正答率90%超え、財やサービスの量・NGOに関する問題の正答率75%超えていて人権やSDGsのような現代社会の課題に対応した学習の成果が見られたため正答率は高いものとなりました。
一方、行政改革や安全保障・世界平和に関する問題の正答率は20~30%前後と低く、国の行政の在り方や国際社会の発展のような、主権者教育に関する基礎的な考え方の定着に課題が見られます。
現代社会においての見方や考え方を学習するとともに、公民的分野に関する知識を習得するだけでなく様々な資料を考察し表現する力を養うことが課題です。
全体を通して基礎的な知識や概念を問う問題に関しては学習成果が見られたため正答率が高く、一方、資料を適切に読み取り、習得した知識の活用して表現する問題の正答率は低かったです。
また、三分野とも「何を理解できて、何ができるのか」・「理解していることをどのように活用するのか」を踏まえて表現させる演習を引き続き行っていく必要があります。
大問構成については、去年と変わらず大問は8題ですが、設問数は前年度の41問から大きく減り36問でした。つまり2点問題が増えたこととなります。
全県平均点は27.0点と去年より1.0点アップしました。ただし東部の平均点は27.7点で全体よりやや高い結果です。正答率50%以上の問題を全て解けたとしても26点となり、平均点に届かない試験です。問題数が減ったことで解答時間は十分であったと思われ、さらに東部の得点状況ヒストグラムを分析すると31~38点に受験者数が多いことから、上位層にとっては比較的得点しやすい試験だったのではないかと考えられます。
各大問毎の出題分野別の正答率を分析すると、特に顕著だったのがばねに関する問題7が全問正答率33.3%以下とかなり低かったことがあげられます。確かに今回の理科の問題中一番難しかった大問でしょう。この分野の応用問題を解いていないと容易には正解できないと思います。
植物・生物系の問題や、イオンについての問題については概ね良い正答率でした。
また出題の傾向においては、電流についての出題でテーブルタップの問題が出題されるなど、日常生活で活かせる理科の知識についてが問われています。計算問題は気圧の問題のようにおそらく今までやったことのないようなものも出題されていますが、よく単位をみて計算すれば正答可能です。
全分野にわたる傾向ですが、問題文をしっかり読み取り、何が問われえているのかを正確に認識していないと間違えてしまう問題が多いと感じます。焦って読み飛ばしてしまったり思い込み勘違いが多いと思う人は、問題文を大まかに取ることはせず、最初から理解しながら正確に読み取っていくことをお勧めします。また記述問題について概ね4割以下の正答率でしたので、現象を表現することについては受験生全般が苦手であるとみられます。
個人的に今回特に目についた問題としては、進化の過程でいつ哺乳類・鳥類が生まれたかの知識を問う問題と、双眼顕微鏡の使い方の手順についての問題でした。
細かい知識まで身についているかをチェックするような問題ですが、講師側としても勘違いしやすいポイントを生徒に伝えきれているかを問われているように感じました。
今後の学習指針について所見を述べます。
〈理科が苦手な人〉まずは一問一答などの問題集で各分野まんべんなく基本事項の語句の理解と記憶していくことを中心に学習しましょう。
正答率が50%以上の問題を確実に正解できるようになれば、平均点に近い点数を取る力は身につきます。
また苦手だからと言って入試過去問を避けて通らず、出題文を丁寧に読んで理解できるかを実践してみましょう。
また1、2年生の内容のほうが点数が低い傾向があるので、なるべく早い時期に復習していくと良いと思います。
〈高得点を狙いたい人〉
今後も記述や計算問題などの2点問題が増えることが予想されます。よって記述問題にしっかり取り組み添削してもらい、どう書けば正解につながるのか、また各分野の特徴的な計算方法を押さえたうえで、難しめの問題にも取り組むことが必要です。
またある分野が他分野との関連性を持っていないかを探求し、ほかの科学現象においても共通性が見いだせないかをという視点を持ちましょう。
鳥取にちなんだ問題も出題されているので、各分野において関連する事項がないかを調べてみたり、日常生活で気づくことがないかを考える習慣を身につけましょう。
今回電磁気・電磁誘導、遺伝、天体、光熱音、力学的エネルギーに関する問題が出題されなかったので、次年度の入試は狙われる可能性が高いと見えます。
こちらの分野については特に重点的に習得する必要があると考えてください。
昨年と同様、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能各領域にわたる基礎的・基本的知識とその活用力をみる大問5題構成でした。
旅行などで鳥取を訪れる外国人とコミュニケーションをとることを想定した問題が多く(【問題4】の問3・問4など)、英語を使っていかに意思伝達に活用するかが問われました。
問題3の英作文は、「arigatouやkonnichiwaのような便利な日本語とその意味と使い時」について、英語で20語程度で表現する問題でした。正答率が10%程度と非常に低く、難問となりました。英作文は全部で3問出題され、配点が50点満点中8点と大きなウエイトを占めます。日ごろから英作文で自分の考えを表現する練習し、「聞かれそうなテーマ」についてはあらかじめ対策を立てておく必要性があります。
問題4の「読むこと」に関する問題では、「宅配便の再配達問題」、「おすすめの宿泊先」、「自分たちの町の紹介」を題材とした読解問題が出題されました。問1ではグラフを参考にしながら必要な情報を読み取る力、問2では複数の情報を整理・統合する力、問3ではイラストを参考にしながら複数の情報を正確に読み取る力が見られました。グラフの推移を説明する比較級を含む英文の理解に係る問題は正答率が約65%と高かったですが、複数の情報を整理して概要を捉え適切なタイトルを選択する問題の正答率は約25%と低く、実際のコミュニケーション場面を意識した読解力の養成が求められます。
問題5の「読むこと」に関する問題では、中学生の交換留学先のタイで体験したことについての発表原稿を読んで、本文の概要や登場人物の心情などを理解する力が見られました。出来事の順番を答える問題の正答率は約70%、登場人物の心情を答える問題の正答率は約65%と高い結果となりました。しかし、事実に基づき、言葉に込められた意味を日本語や英語で説明する問題では正答率がいずれも約20%と低迷しました。読み取った内容やそれについての自分の考えを英語で表現する英作文力がここでも求められています。
これからの入試では、社会的な事柄に対する出題傾向が高まることが予想されますので、自分の外の世界を意識し考えるということをやっておきましょう。また、英作文のための語彙力アップや、文法を使いこなすスキルアップもしておきましょう。
・単純な知識問題よりも図表等読み取って答えを導き出す問題へのシフト
・国語の作文や英語の英作文などの「書く」ことを重視
が特徴として挙げられます。この2点について、しっかり対策を練る必要があります。
また、理科や社会といったこれまでは暗記で対応できた教科でも、初めて見る資料やグラフから読み取れる情報をもとにして解答を導くという新傾向の問題が増えつつあります。理科や社会を後回しにして夏に英語・数学・国語を集中して固める、というこれまでのやり方は通用しません。夏休みの間に、中1・2年で習った事項を確実にマスターしておく必要があります。