令和4年度 鳥取県立高校入試 問題と平均点と分析

お知らせ
鳥取県立高等学校入学者選抜学力検査における得点状況

■教科別得点の平均点及び総得点の平均点(全日制課程)

年度 国語 社会 数学 理科 英語 総得点
令和4年度 31.3 24.7 26.7 28.2 25.8 137.1
令和3年度 29.0 35.3 24.4 27.0 28.7 144.4
令和2年度 27.7 28.5 25.7 27.0 28.4 137.3
平成31年度 26.9 30.1 27.3 31.3 24.6 140.3
平成30年度 29.9 30.4 24.6 28.6 27.7 141.2
平成29年度 28.3 27.6 27.4 31.4 29.1 143.8
平成28年度 27.9 27.4 25.2 30.6 30.3 141.3
平成27年度 29.6 33.4 26.4 27.2 28.9 145.5
平成26年度 25.6 24.9 28.5 26.7 30.7 136.3
平成25年度 23.5 27.1 27.5 25.2 27.1 130.5
平成24年度 25.3 30.0 22.8 29.2 26.6 133.9
平成23年度 24.9 29.1 23.2 29.1 26.8 133.1
平成22年度 29.1 30.2 26.5 25.4 22.2 133.3
平成21年度 25.2 24.9 29.5 23.2 23.7 126.6
平成20年度 25.2 27.8 21.2 25.5 31.1 130.7
平成19年度 29.8 29.2 21.0 28.7 26.0 134.7
平成18年度 30.6 24.7 17.6 25.7 28.3 127.0

■レイズによる分析

令和4年3月実施の鳥取県立高校入試 学力検査の平均点が発表されました。詳細PDFファイルはこちら
総得点平均点 137.1(250点満点)と、昨年は140点台を回復した平均点が今年は再び140点台を割り込みました。以下に各教科の出題傾向と難易度を分析していきます。

【国語】

大問構成は、昨年と異なり、問題一〈小問集合〉・問題二〈文学的文章〉・問題三〈説明的文章〉・問題四〈古文〉問題五〈資料を基にした表現と作文問題〉の5題構成となりました、昨年までの4題から5題となり、一昨年前までと同じ構成に戻りました。

 

問題一の小問集合では、漢字の読み書きや画数、ことわざ、文法と漢文といった言語知識に関する問題など幅広い分野から出題されています。
中でもことわざを問う問題では、「該当するものをすべて選べ」形式の問題が出題されました[問三 正答率58.2%]。
問題自体はそれほど難しくはないのですが、いくつ答えがあるか分からない問題のためか、正答率は低かったです。今後もこの種の「該当するものはすべて選べ」形式の問題は出題されると思います。
この種の問題演習をこなして、自信をもって答えられるようにしましょう。

 

問題二の文学的文章では、鈴村ふみによる『櫓太鼓がきこえる』からの出題となりました。
昨年のような文章全体から主題を読み取り、的確に表現する問題がなかったため、昨年よりは全体的に正答率は高くなりました。
昨年と比べて、記述問題の正答率は低いものの、部分点率は増加し、無答率は大幅に減少しました[問四正答率12.2%・部分点率66.7%]。
理由を問う問題では、理由となる箇所は傍線部の直前直後にあります。「探す」訓練と、「答えにまとめる」訓練が必要となります。

 

問題三では、敬語について論じた平田オリザの『対話のレッスン』から、評論文に関する問題が出題されました。
記述問題・選択問題ともに硬質な問題が出題されています。
記述問題については、指示語のさす内容について「これより後の部分から」探す問題[問三正答率60.5%]や、同じく指示語がさす内容について「原因とともに、本文中の語句を用いて」答える問題[問五正答率19.8%・部分点率40.7%]のように、設問に細かな指示がついている問題が出題されました。
ただ、問題の本質はあくまでも指示語の内容問題ですので、落ち着いて取り組めば正解もしくは部分点は取れる問題だったと思われます。
また、選択問題に関しては、引用文についてその引用の意図を尋ねる問題が正答率の低いもとなりました[問六正答率37.9%]。
複数の文章からなる問題や、引用の意図を聞く問題の形式は、大学入学共通テストでもよく出題される形式です。
昨年に引き続き、高校入試の時点から大学入試を意識した問題を出題しようという、問題作成者の意図がうかがえます。

 

問題四の古文に関しては、入試問題集などでよく出題される典型的な古文からの出題となりました(『沙石集』)。
同じ文章をどこかで見たことのある受験生も多かったと思います。正答率もすべての問題が60%を超えていました。

 

最後の問題五に関しては、話し合いによる合意形成の仕方を問う問題と、関連した作文の問題が出題されました。
作文に関しては、意見と根拠、具体と抽象など、情報と情報の関係等について自分の考えを条件に従って適切な文章にまとめる力を育成していく必要があります。

【数学】

大問構成は、去年の6題から1題減った5題の構成で、
設問数35問となり前年度より3問減りました。
全県平均点は去年の24.4点から2.3点アップの26.7点でした。
過去5年間の平均値では0.8点上回っています。

 

問題の傾向としては、前年に引き続き記述によって説明を求める問題が出題されました。
身近な場面を取り上げ、表やグラフや箱ひげ図から解決の方法・手順について記述させる問題でしたが、単純な基礎問題しか解いていない生徒にとっては難しいものだったかもしれません。
全体的には基礎的・基本的事項の理解度を問う問題が多く概ね正答率が高く良好であったため、正答率50%以上の問題を正解できれば30点以上得点できる内容でした。

 

今回無回答、誤答が目立った問題としては
①回転体の体積、②相対度数、③一次方程式の立式、④二次関数と一次関数の文字を用いた式、⑤平面図形の面積と相似比でした。
いずれも数学的な見方・考え方を働かせて、論理的に考察し課題を解決する力を問われる問題です。
基礎の理解とともに、基礎知識を融合した問題に取り組む必要があります。

 

鳥取東高・西高を狙う受験生であれば基礎の計算力を間違いないものとするのはもちろんですが、記述問題・作図問題の対策をしっかり行い、問題解決のための見通しや必要な条件を自ら見つけ出す力を培っていく必要があります。

【社会】

大問構成は、例年通り、問題1〈地理的分野〉・問題2〈歴史的分野〉・問題3〈公民的分野〉の3題構成で、設問数は昨年より2問増え42問でした。一昨年が37問・昨年が40問ですので、ここ3年については、問題数は増加の傾向にあります。
社会の入試問題については、地理・歴史・公民の各分野とも地図・グラフ・写真・イラスト・年表などの資料が多く与えられ、複数の資料を見比べて読み取った情報をもとに、基礎・基本的な知識を活用しながら答えることが求められています。そのため、他の教科と比べてもページ数が多いのが特徴です。以下に特徴的な問題についてみていきます。

 

問題1の地理分野では、東南アジア諸国についての問題や地域の特色・気候が問われる問題が出題されていました。全体的に正答率が50%切っている問題が多い結果となりました。問2(1)20.6%(2)25.7% 問4(3)28.6%。世界と日本の各地域の特色・気候・地形がつかみきれていないところが多くあるため、正確に各地域の特色をつかむ必要があります。

 

問題2の歴史分野では、近世・近代・近現代の間を中心的にグラフや年表・資料を使った問題が出題されました。また、毎年出題される歴史事象の並び替えについては、正答率は9.1%と非常に低いものとなりました。基本的な歴史事象については、年号までしっかりと覚える必要があります。近世~近代の産業と経済の特色を問う問題の問2(1)14.3%、国際協調外交の問題問2(3)③6.9%と非常に正答率が低かったです。各時代の背景を覚え、グラフや史料を読み取り問題で問われている内容を正確につかむ演習を行い記述問題の対策をする必要があります。
問題3の公民分野では、衆議院議員の選挙の仕組みを問う問題、消費生活と経済の問題、需要と供給を問う問題、天皇の国事行為を問う問題、難民問題とUNHCRを問う問題で正答率が40%切っていました。基礎・基本的な事がらを確実に覚えるだけでなく、覚えた事がらと照らし合わせながら読み取った情報を文章にまとめる練習も積んでおく必要があります。あるできごと(原因)と他のできごと(結果)とのつながりを整理する学習が一層求められます。

【理科】

大問構成は大問は去年と変わらず8題・設問数も同じく41問でした。
平均点は28.2点と去年より1.2点アップしました。去年の問題より一問多く解けたというような試験内容だったと思います。

 

出題内容としては、例年通り中学校の学習内容が一通り出題されました。
出題分野別の正答率を分析すると、植物・人体・力学は概ね正答率が6割以上となり、得点源となった分野でありました。
反対に正答率の低かった分野は、化学分野の物質の性質、化学反応式とイオン・天体に関する問題・電気と電磁誘導に関する問題などでした。
今年の問題の際立った出題形式として、選択問題で該当するものをすべて解答する問題が出題されました。正答率は12.0%・11.4%と大変低い正答率でした。
今後は選択問題といえども、慎重に解答すべきタイプの問題が出題されると思います。

計算問題は3題出題され、いずれも選択問題ではなく記述式でした。正答率はおよそ4割以下でしたが、問題文の正確な読み取りと普段の計算練習ができていれば必ず正解できた問題だったと思います。
その他に正答率が低かった問題としては、硝酸銀水溶液中の銅の析出について、イオンの化学反応式を記述させるものがありました。
こちらは普段の学習の中でイオンというものの性質の理解と、電子の移動に関する正確な知識が問われていました。正答率は24.6%で難問だったと思います。

今後の学習指針について所見を述べます。
理科が苦手な人は各分野まんべんなく基本事項の語句の理解と記憶していくことを中心に学習しましょう。一問一答式の問題集の活用などが良いと思います。
正答率が50%以上の問題は確実に正解できるようにすると、25点以上は取れるようになると思います。
鳥取東高・鳥取西高を狙う生徒は、計算問題はどの分野のものでも確実に解けるという自信をつけましょう。
そしてほかの受験生と差をつけるには動植物の具体名を覚え、どのカテゴリに分類されるかも知っていきましょう。
最後に、鳥取にちなんだ農産物や気象・地学的条件等にも興味をもって、今まで習った内容でより深く事象がとらえられないかを考えてみましょう。

【英語】

昨年と同様の大問5題構成で、前年内容を踏襲した出題形式となりました。平均点については、50点満点中25.8点と、ここ10年の内に2番目に低い平均点となりました。
(最も低い平均点は2019年度の24.6点)。
「書くこと」の比重がおおきくなったのが平均点低下の一因かと思います。
今年から学習指導要領が改訂され、仮定法や原型不定詞などの新しい文法の問題の出題も予想されていましたが、出題はされませんでした。
新出文法に関しては、2023年入試に出題されるかもしれません。

 

【問題1】はリスニング問題で、問1が内容にあった図を選択する問題で、問2から4までが対話を聞いて解答する問題でした。
聞き取った内容から予想される質問を4語以上で英作する問題もありました。
聞き取った内容を単純に答える問題に関しては、正答率は65%以上でした。
しかし、聞き取った内容に関してイラストの並び替えや、適語補充や英文記述の問題に関して、正答率は40%を下回っています。
英語の得意・不得意の分かれ目は「実際に英単語・英文を書けるかどうか」にかかっています。
「英文を毎日書く」訓練を積みたいものです。

 

【問題2】の問1・2は空所補充問題、問3は英単語を会話文に併せて適切に変化させる問題でした。
自分の持っている英語の知識を、問われている状況に適応させながら解答する能力が問われる問題でした。

 

【問題3】は、英文を記述して、自分の意見や考えを表現する問題でした。
問1はカナダからの留学生と日本のホストファーザーの間で行われるゴミについての会話文を読み、受け答えに関する空所補充を4語以上の英文で解答する問題でした。
問2は問1を受けて、自分の考えを20語以上の英文で解答する問題でした。
問2の英作文では、誤答・無解答が65%以上と、多くの受験生が苦しんだ問題となりました。
ここでも「英文を毎日書く」トレーニングが積めていたかどうかが問われる問題となりました。

 

【問題4】は、前年と同じ、会話文と図表の融合問題でした。
本文はスマートフォンの使用時間についてのもので決して難しくなく、平易な文章と言えます。
【問題4】と【問題5】であわせて24点の配点と、50点の全体の半分の配点となります。
この二つの読解問題で点数が取れたかどうかが、全体の点数を左右したと思います。

 

全体的な傾向として、聞き取った内容、読み取った内容を直接問われる問題の正答率は高いようでした。
しかし、得られた情報から問われている条件に合った解答を考察し、発信する問題は正答率が低かったようです。
教科書改訂に伴う英語の難化傾向を考えると、今後ますます思考力を問う形式の出題が多くなっていくであろうと考えられます。
思考力・発信力(書く)の技能向上は、高得点への鍵となりそうです。
・思考力を問う長文読解問題の演習を早い段階から実施する。
・英作文で自分の考えを端的に述べる練習をしておく。
など、例年以上に早め早めの対策が必要でしょう。

 

 

本年の試験は学習指導要領改訂後の初の高校入試となりました。
ひとつ際立った特徴が、どの教科においても見られました。それは
得られた情報から、問われている条件に合った解答を考察し、発信する力を見る問題が増えた
ことです。
読解力と発信力が必要な、高度な力が求められています。
一朝一夕には養成するのが難しいのですが、まずは問題文と設問文をしっかり読み解く 読解力 を身につけましょう。

また、理科や社会といったこれまでは暗記で対応できた教科でも、初めて見る資料やグラフから読み取れる情報をもとにして解答を導くという新傾向の問題が増えつつあります。理科や社会を後回しにして夏に英語・数学・国語を集中して固める、というこれまでのやり方は通用しません。夏休みの間に、中1・2年で習った事項を確実にマスターしておく必要があります。